13.インバータによる制御について
推奨使用可能周波数について
インバータ駆動時の基底(ベース)周波数は60Hzです。それを越える周波数で運転すると連続トルクは低下します。
ギヤードモーターは、商用電源駆動では、50Hz又は60Hzの周波数とその時の電圧に対して、定格トルクで連続運転が可能なように設計されています。
一方、インバータ駆動では様々な周波数で運転されますが、一般的には60Hzが定格周波数として設計されており、基底(ベース)周波数とも呼ばれています。
基底周波数を越える領域で使用する場合、一般的にインバータは120Hzまでの周波数での使用は問題ありませんが、ギヤードモーターはモーター容量によって最高周波数が変わる場合があることに注意が必要です。
さらに、電圧は変わらず定出力に近い特性となるので、ギヤードモーターの発生トルクは周波数が大きくなるに従って低減することから、負荷トルクが一定であってもギヤードモーターのトルクが不足する恐れがあり注意が必要です。
ギヤードモーターの出力トルクはモーター内部の磁束量(大きさ)で決まり、その値はモーターに印加される電圧と周波数に依存します。
定格電圧で発生した磁束量状態で、定格回転(定格すべり)した時に定格トルクが発生し、定格電流が流れます。
電圧が規定より高くなり過ぎると磁気飽和現象により無効電流が流れ、電流値が高くなる現象が発生します。
つまり、定格トルクを発生させるためには、この電圧V (V)/周波数f (Hz)の比を一定に保たなければならないと言うことです。
インバータは、ギヤードモーターの速度を可変させるため周波数を可変しますが、この時上記のV/fの比率を周波数の変化とともに保つことで、定トルク運転が可能となります。
ギヤードモーターの設計基準周波数に対し、インバータの基本パラメータで基底周波数を小さく設定した場合、V/fの比が大きくなり過励磁状態を招き、過大な励磁電流が流れ「過電流トリップ」につながります。
また、電圧を下げるとトルク不足となり運転に支障を来たすことになります。
ギヤードモーターのインバータによる運転で、200V/50Hz地区なのでインバータのパラメータを、200V/50Hzにしてもよいのかということに関しては、汎用の三相誘導電動機(三相モーター)と定トルク用三相誘導電動機(定トルクモーター)のインバータによる運転条件は、基底周波数において定格トルク運転できることを前提にしているため、200V/60Hz、220V/60Hzの設定で運転するように記載されています。
これは、インバータで運転した場合、その出力波形には高調波電流分を含むため、ギヤードモーターに流れる電流は定格トルクを発生させた場合、定格電流+高調波電流分となり電流値が増加します。
50Hz定格の条件では、電流値、定格トルクが大きくなるため定格トルク連続運転では、ギヤードモーターの焼損事故を招く要因となります。
この為、インバータ運転での推奨の基底周波数は60Hzの設定としています。
また、汎用ギヤードモーターを50Hz基底周波数で運転する場合は、ギヤードモーターの焼損を防ぐため連続トルクを下げた運転が必要になります。
特に近年では、センサレスベクトル制御方式のインバータを使用する場合は、その出力波形が改善されており汎用ギヤードモーターの定トルク運転も多くの場合200V/60Hz、220V/60Hzで運転可能になっています。
【インバータ運転でのポイント】
200V/60Hzで運転を行うため、50Hzでも60Hz地区の定格トルクと同じ値になり、商用電源による運転時よりトルクは減少します。
この為、動力計算時にこの情報を考慮し、減速機で60HzをMAXとした減速比を選定するか、又は動力の余裕度を考慮します。設計時に50Hzの定格トルクで運転している既設のライン等を改造して、インバータにて運転する場合も注意が必要です。
運転トルク特性のついて
インバータ駆動の始動トルクや始動電流は商用電源駆動より小さくなります。
商用電源の直入れでは、ギヤードモーターに加える電圧と周波数が大きい為、大きな始動トルク、すなわち定格トルクの200〜300%程度が得られますが、始動電流も大きく定格電流の600〜800%程度となります。
一方、インバータ駆動では周波数と電圧は0から徐々に上がり、ギヤードモーターに加えられるので、始動トルクは定格の100〜200%程度と小さくなりますが、始動電流も100〜200%程度と小さくなることから、ブレーカの容量を下げられる可能性があります。
「VF制御」(図1参照)は、インバータが世の中に出現した当初から存在する「周波数」と「電圧」を同時に制御する古典的な制御方式で、下記にあげるようなトルク特性上の特徴があります。
出力する周波数に対応して、Vf特性(パラメーターとして設定する)から一義的に定まる電圧を、ギヤードモーターのすべり等の状態に無関係に出力するが、Vf制御は図1に示すようにギヤードモーターの低周波数域でのトルク特性(汎用ギヤードモーターでは低周波数域でのトルクが低下し特に始動トルクが小さい)に難点がある。
インバータ専用定トルクギヤードモーターの場合は、一般的に6〜60Hzで定トルク連続運転での温度上昇に耐えられる設計になっており、一般にVf制御においても6〜60Hzで定トルク連続運転が可能です。
反面汎用ギヤードモーターの場合は、30Hz以下の周波数では、ギヤードモーターの冷却能力が低下し温度上昇等の問題があります。
従って、ギヤードモーターの連続運転トルクの低減を考慮する必要があり、連続運転範囲を狭くするか、ギヤードモーター容量を大きいものを選定する等の対策が必要となる。
センサレスベクトル制御は、マイクロプロセッサーの処理速度向上等のハードウェアの進歩により、Vf制御のトルク特性上の諸問題を改善すべく出てきた制御方式で下記のような特性があります。
速度検出センサーなしに、予め設定したギヤードモーターの特性定数(抵抗値等)や電圧・電流からギヤードモーターの回転速度(すべり)を推定し、出力すべき電圧をベクトル演算で決定します。
ギヤードモーターの運転状態に見合ったほぼ最適に近い電圧が出力され、ギヤードモーターの発熱が抑えられるので、インバータ専用定トルクギヤードモーターはもちろん、小容量(1.5kW以下)の汎用ギヤードモーターでも6〜60Hzで定トルク連続運転が可能になります。
更に低速での短時間最大トルクが大幅に向上します。このことは始動トルクの差にもなるので、センサレスベクトル制御が起動トルクの大きい負荷の起動に適しています。
ただ汎用ギヤードモーターの場合、ギヤードモーター容量が大きくなると、低周波数域でギヤードモーターの連続運転トルクが低減することは避けられないことも認識しておく必要があります。
*参考 三菱電機
インバータ駆動時の注意事項
ブレーキ付きギヤードモーターの場合、ブレーキ電源はインバータの電源側(1次側)へ別回路として接続し、インバータ主回路OFF後ブレーキ動作が許される用途であることを確認します。低速運転域では多少騒音が大きくなることがあります。
また、ブレーキ部分の冷却能力がダウンしますのでブレーキコイルの発熱が問題となります。
周波数25Hz以下で運転する場合は、1時間定格または25%EDとなります。
制動容量に限界がありますので、60Hz以下でブレーキ動作するようにします。
耐圧防爆仕様のギヤードモーターを駆動する場合は、ギヤードモーターとインバータを合わせた防爆認定品を使用する意事となります。
その場合、インバータ本体は非防爆構造ですので、必ず非危険場所へ設置します。
ギヤードモーターとインバータ間の配線距離が長い場合には、ケーブルの電圧降下によりギヤードモーターのトルクが低下します。電圧降下は、定格電圧の2%以下を目安にケーブルサイズを選定します。
400V級モーターをインバータ駆動する場合、配線定数に起因するサージ電圧がモータ−の端子間に発生し、その電圧によってモーター絶縁を劣化させることがあります。このような場合には次のような対策の実施を検討します。
1. モーターの絶縁を強化する方法
400V級インバータ駆動用絶縁強化ギヤードモーターを使用します。
2. インバータ側でサージ電圧を抑制する方法
インバータの2次側に、モーターの端子電圧が850V以下となるようなサージ電圧を抑制するためのフィルタを接続します
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